相手に対して何か交渉するときに、よく「検討します」で終わるで終わることはありませんか?
要約
食品スーパーのバイヤー・マーチャンダイザーとして、売場づくりや販売計画、食品メーカーとの商談を担当してきた筆者。多い時期には 2 日で 52 社の提案を聞いた経験から、提案を「受ける側」が何を見ているのかを整理しています。
「検討します」は、必ずしも内容が悪いという意味ではありませんが、判断材料が不足していたり、社内説明や導入後のイメージが描けていなかったりする場合に出やすい言葉です。
通る提案のポイントは、自社商品の説明ではなく、相手の課題・利益・社内事情を主語にして考えることです。
こんな経験ありませんか?
・商談中は手応えがあったのに、「検討します」で終わる
・提案資料を作り込んでいるのに、なかなか採用されない
・商品の魅力を説明しているのに、相手の反応が薄い
・商談後に連絡が途絶え、断られた理由も分からない
そんな感覚、ありませんか?
「検討します」の裏で、相手が考えていること
・バイヤーは意地悪で断っているわけではない。
・通せない理由はあるが、それを一つひとつ説明する時間がなく、やんわり終わることがある。
・価格や内容に納得できていない。
・社内の決裁者に説明する材料が足りない。
・他社と比較したい。
・そもそも今すぐ導入する必要性を感じていない。
・「検討します」は、興味がない場合だけでなく、判断材料や決裁権が不足している場合にも使われる。
通らない提案の共通点は「主語」
・通らない提案は、主語が「自分」や「自社商品」になっている。
・「この商品はこんなにすごい」「この技術は他社にない」「今、売れている」と、自社の魅力だけを説明する。
・そのとき、受け手の頭に浮かぶのは「で、こちらにとっては?」という疑問。
・通る提案は、相手の売場や顧客、課題を主語にする。
・「御社の売場にはこの空白があり、この商品を入れると売上や利益がこう変わる」と、相手にとっての意味を示す。
バイヤーが見ている 4 つの視点
視点①【姿勢】自分の意志で来ているか
・どこにでも出せる汎用資料では、相手のために準備したかどうかがすぐ分かる。
・相手の名前を差し替えただけの提案は、自社都合の営業に見えやすい。
・売り手・買い手・その先のお客様の三者が得をする形になっているかが、最初に見られる。
・「売りたい」だけでなく、「相手の課題を解決したい」という姿勢が必要。
視点②【準備】どこまで調べてきたか
見られているのは、主に次の 3 つです。
・相手の売場やサービス、現状を実際に見てきたか。
・競合でどのように扱われているかを把握しているか。
・市場のトレンドや顧客の変化をつかんでいるか。
・調べてきた量は、そのまま本気度として受け取られる。
・高額な市場データを購入しなくても、現場を見る、SNS の反応を調べる、無料統計を確認するなど、できる準備はある。
・「データがないから調べられない」ではなく、無料で集められる情報から始めることが大切。
視点③【出口】売った後まで描けているか
・多くの提案は「買ってください」で終わる。
・しかし相手が知りたいのは、導入後にどうなるか。
・いくらで売れるのか、どれだけ利益が残るのか、どう育てていくのかまで描けると、提案の説得力が増す。
・自社が相見積もりを取られることを前提に、相手の利益から逆算して話す営業は信頼されやすい。
・導入後の販売計画、販促方法、改善の進め方まで示すと、相手は社内で説明しやすくなる。
視点④【継続】付き合い続ける気があるか
・商談は一回きりの勝負ではない。
・前回お願いされた改善に対応したか。
・毎回、同じ提案を持ってきていないか。
・相手が社内で説明できる資料を渡しているか。
・担当者が「いいな」と思っても、社内の決裁者に説明できなければ導入できない。
・提案資料は、相手が社内で承認を得るための武器でもある。
・「これなら上司も納得するだろう」という視点で資料を作ることが、受け手にとって大きな助けになる。
やりがちだが、逆効果になる 3 つ
1. 完璧すぎるプレゼン
・一言一句よどみなく説明すると、相手が質問を挟む隙がなくなる。
・商談が対話ではなく、一方的な発表会になってしまう。
・資料を説明し切ることより、相手の反応や疑問を聞きながら進めることが大切。
2. 技術・こだわりの話だけをする
・技術のすごさや商品のこだわりは伝わる。
・しかし相手が考えているのは、「自社のお客様が本当に求めているのか」。
・こだわりは、そのまま説明するのではなく、相手の売上、利益、作業負担、顧客満足などのメリットに翻訳する。
3. 時間オーバー
・約束した 30 分が 45 分になると、相手の仕事を 15 分押してしまう。
・時間を守ることは、それだけで信頼につながる。
・伝えたい内容を詰め込むより、要点を絞り、質問や次の確認に時間を残す。
提案を作るときの確認項目
・相手の売場や顧客、現在の課題を具体的に把握しているか。
・自社商品の強みを、相手の利益や課題解決に翻訳できているか。
・導入後の売り方、価格、利益、販促を説明できるか。
・相手が社内で説明できる数字や比較材料があるか。
・前回の要望や改善点を、今回の提案に反映しているか。
・決める人や決裁の流れを想定しているか。
・約束した時間内で説明できるか。
まとめ:相手の主語で考える人が、いちばん強い
・「検討します」で終わる提案は、自社や商品の話に偏っていることが多い。
・相手の課題、売場、顧客、利益を主語にして提案する。
・バイヤーが見るのは、姿勢・準備・出口・継続の 4 つ。
・提案の前に、相手の現場・競合・市場を調べる。
・売った後の売上、利益、販促、改善まで描く。
・相手が社内で説明できる資料を用意する。
・商談は一度きりではなく、前回の改善や要望を次回へつなげる。
・完璧な発表より対話、技術の自慢より相手のメリット、長い説明より時間厳守が重要。
提案の目的は、自社商品の魅力を一方的に伝えることではありません。
相手が「自社にとって導入する意味がある」「社内で説明できる」「この人と継続して付き合いたい」と思える状態を作ることです。